SATO Wataru Laboratory

涙は社会的支援を提供する意図を喚起する:41カ国での調査


(Zickfeld et al.: J Exp Soc Psychol)



涙を流して泣くことは,ヒトに普遍的である.
感情的な涙には,愛着の機能がある(社会的支援の意図を喚起し,社会的な接着剤になる)と提案されている.
初期の実験的研究はいくつかの方法でこの仮説を支持したが,研究は北米・欧州の参加者のみを対象に行われたため,一般化には限界があった.

本プロジェクトでは,涙による社会的支援意図の喚起効果と,媒介変数および調整変数の可能性について,41カ国を対象とした完全事前登録型の研究を実施した.
参加者は,涙が付加された場合とされていない場合の顔写真を評定した.

その結果,「涙を流している人を見ると支援の意思が高まる」という主要予測が確認された.
この効果は,観察者の個人的な苦痛の増加ではなく,泣いている対象者をより温かくより無力であると認識すること,より親近感を感じより共感的な関心を持つことによって媒介されていた.
この効果は,状況の感情価,対象者を内集団メンバーと認識するか,共感的関心の特性によって調整され,中性的な状況,低い内集団認識,高い共感的関心が効果を高めた.
結果は国ごとの異質性が高く,国レベルの一人当たりGDPと主観的幸福度で最もよく説明され,こうしたスコアの高い国ほど強い効果があった.



こうした結果は,涙が社会的な接着剤として機能することを示唆し,感情的に泣くことが大人になっても続く理由の一つと考えられる.


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