SATO Wataru Laboratory

共感特性と自閉症特性がライブ相互作用における感情・表情反応におよぼす調節効果の検討


(Hsu, Sato, & Yoshikawa: PLoS One)


感情伝染と表情模倣の間には密接な関係があることが理論的に指摘され実証データによって裏付けられている.
表情は,感情と運動共鳴のために不可欠である.
先行研究では共感特性が表情模倣を促進することが報告されているが,自閉症特性と表情模倣の関係については議論が続いている.
さらに先行研究では,静的表情やビデオ録画された動的表情が呈示されており,ライブ相互作用のもつ現実性に欠ける可能性がある.

我々は,映像リレーシステムを用いて,94名の健常女性参加者に,怒りと幸福の動的表情のライブ映像と録画済みビデオ映像を呈示することでこの限界に対処した.
主観的な感情価と活性度の評価を査定し,感情伝染を推定した.
大頬骨筋と皺眉筋の筋電図を測定し,表情模倣を推定した.
個人差の測定には,共感的関心と自閉症指数を用いた.

その結果,感情伝染や表情模倣に対する特性の調節効果が,ライブ相互作用によって増強されることは見出されなかった.
しかし,共感的関心が高いほど,感情伝染や皺眉筋模倣が強くなることが分かった.
自閉症指数と感情条件の交互作用は示されず,自閉症特性が感情伝染や表情模倣を調整しないことが示唆された.



こうした結果から,ビデオや写真を用いた共感特性と感情伝染・表情模倣の関係に関するこれまでの知見が,現実の相互作用に一般化できる可能性が示唆される.


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