SATO Wataru Laboratory

高齢者の表情処理の概論


(斉藤・佐藤: エモーション・スタディーズ)


高齢者における表情処理についての研究を認識・知覚・模倣に焦点を当て紹介する.

表情認識では高齢者は,快表情をより好むという快優位効果が現れると言われていたが,最近の研究からそれほど頑健でないことが示唆されている.
怒り・恐怖・悲しみのような不快表情で若年者より成績が悪いということは,一貫して示されている.
異なる理論による説明が提案されているが,全ての知見を包括的に説明できていない.

表情知覚では高齢者は,不快表情の知覚は速く問題ないと考えられるが,快表情の知覚は遅く,快優位効果は示されていない.
この効果と,それと関連する現象は,検出の遅い段階でのみ現れるようだ.

検出と同様に,比較的自動的処理を反映しているとみられる表情模倣では,快・不快に関わらず高齢者ではその能力が保持されている可能性が高い.

このような自動的処理を反映するものと,意識が介在する表情認識での高齢者のパターンの乖離について,さらに表情処理で作用している各処理の間の関連性を探る必要があることが示唆される.


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