SATO Wataru Laboratory

感情的価値を持つ中性表情のすばやい検出における性差


(Saito, Sato, & Yoshikawa: Biol Sex Differ)


背景:
感情的な意味を持つ顔をすばやく検出することは,他者の感情を理解するために不可欠であり,対人関係の円滑化を促進する可能性がある.
感情表情の検出能力における性差を調べた研究はあるが,感情表情は視覚的顕著性を持つため,感情的な意味が検出の性差に貢献するかどうかは依然として不明である.
そこで学習された感情的価値のある中性表情とない中性表情をすばやく検出する能力を男女で比較した.
すべての顔には視覚的顕著性がない.

方法:
まず若年成人の女性参加者と男性参加者は,それぞれ正・負・ゼロの感情的価値を獲得するように,中性表情が金銭的報酬・金銭的罰・金銭的結果を伴わない連合学習課題に取り組んだ.
次に新たに呈示された中性表情ディストラクタの中に,あらかじめ学習された中性表情が不一致顔として呈示される視覚的探索課題を行った.
視覚的探索課題中,参加者は不一致顔をすばやく識別することが求められた.



結果:
女性参加者と男性参加者の学習能力は同等であった.
視覚的探索の結果,女性参加者は呈示された顔の性別に関係なく,感情的価値に関連する中性表情を迅速に検出できたが,男性参加者は男性の顔に対してのみこの能力を示した.



結論:
感情的価値のある中性表情をすばやく検出する能力の性差は,その顔の性別によって調節された.
この結果から,女性のほうが感情的な意味を持つ顔に対する感受性が高く,それが対人コミュニケーションを向上させる可能性があることが示唆される.


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