SATO Wataru Laboratory

表情の動的様相

(Sato & Yoshikawa: Cognition and Emotion)


■はじめに

 日常生活において,表情の動的な変化は,コミュニケーションの上での豊かな情報源となっている.

 しかし,表情の動的側面については,これまでほとんど実験的検討が行われていない.

 この問題について検討するための第1歩として本研究では,被験者に表情のモーフィング・アニメーションを呈示し,その変化速度の自然さについての評価を求めた.


■方法

<刺激>
 基本6感情(驚き・恐怖・怒り・嫌悪・幸福・悲しみ)の表情について,0%(中性表情)から100%の間の画像を2%刻みで49画像作成し,全51画像の呈示による映像クリップを作成した(図 1a). 
 各表情について,5 ms/frame (全255 ms), 10 ms/frame (510 ms), 20 ms/frame (1020 ms), and 40 ms/frame (2040 ms)の4速度条件のクリップを順に呈示した(図 1b).

<課題>
 それぞれの刺激について変化速度の自然さを7段階で評価した.




■結果

 変化速度の自然さ結果は図 2a.
 分散分析と傾向検定の結果から,感情カテゴリによって,表情の変化速度とその自然さの関係は異なることが示された. 
 主成分分析の結果,従来の報告とは異なる表情の2次元布置が示された(図 2b). 




■考察

 本研究の結果は,ヒトの表情の表象には,動きの情報も含まれていることを示す.

 このことは,表情の神経表象を有するとされる上側頭溝(STS)が,解剖学的に形態と動きの情報の合流地点であることを考えると興味深い.

 今後の表情研究においては,動的な特性にも着目することが必要だろう.




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