SATO Wataru Laboratory

自閉症スペクトラム障害の成人における社会脳ネットワークの灰白質体積の減少


(Sato*, Kochiyama*, Uono, Yoshimura, Kubota, Sawada, Sakihama, & Toichi (* equal contributors): Front Hum Neurosci)



自閉症スペクトラム障害(ASD)は,対人相互作用の障害に特徴づけられる神経発達障害である.
理論的・実証的証拠は社会脳ネットワークの障害がASDの神経基盤であることを示唆するが,先行のASDの成人を対象とする構造的磁気共鳴画像(MRI)研究は,明確な結果を報告していない.
言語障害といった交絡要因の関与の可能性が考えられる.

この問題を検討するため,言語に問題なく並存障害なく服薬のないASD群および性別・年齢を対応させた定型発達(TD)群を対象として,構造的MRIを撮像し灰白質体積を分析した.

単変量でのボクセル単位形態分析の結果,ASD群においてTD群と比べて,左下後頭回・左紡錘状回・右中側頭回・両側扁桃体・右下前頭回・右眼窩前頭皮質・左背内側前頭皮質といった脳領域で灰白質体積が低いことが示された.



偏最小二乗分析を用いた多変量アプローチの結果,これらの領域がASD群とTD群を判別するネットワークを形成していることが示された.



これらの領域の情報を用いた偏最小二乗判別分析の結果,高い正確度・感度・特異度・精度(>80%)で群が判別できることが示された.



こうした結果から,社会脳ネットワークの灰白質体積の減少が,ASDの成人における対人相互作用の障害の神経基盤であることが示唆される.


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