SATO Wataru Laboratory

片側内側側頭葉構造切除後の表情検出の障害


(Sato, Usui, Sawada, Kondo, Toichi, & Inoue: Sci Rep)


感情的な表情の検出は,対面コミュニケーションにおける最初期の不可欠な要素である.
この過程を調べた神経心理学的研究は,両側の扁桃体損傷により表情検出が障害されることを報告した.
しかし,対象となった患者の数が限られていたこともあり,結果は不一致だった.
さらに,この処理が表情の感情的な要因に基づくか視覚的な要因に基づくかは不明だった.

この問題を調べるため,扁桃体を含む側頭葉内側構造を片側切除した患者(n=23)を対象に,切除半球と健常半球を刺激する条件でパフォーマンス比較した.
患者は,中性表情の中から,通常の怒り・幸福の表情あるいは統制刺激である逆表情を検出した.



通常の表情の検出にかかる反応時間は逆表情に比べて,ターゲット表情が健常半球の対側視野に呈示された場合(すなわち健常半球が刺激された場合),切除半球の対側視野に呈示された場合(すなわち切除半球が刺激された場合)に比べて短くなった.



この結果から,扁桃体を含む側頭葉内側構造が,感情的意義に応じた表情の検出において重要な役割を果たしていることが示唆される.


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