SATO Wataru Laboratory
見本照合パラダイムにおける刺激操作が感情表情の意識的知覚に及ぼす影響
(Sato & Yoshikawa: Sci Rep)
感情的な表情を意識的に知覚することは,社会的相互作用において不可欠な役割を果たす.
しかし,先行の心理学的研究では,感情表情が中性表情よりも意識的知覚されやすいかどうかについて,不一致な知見が報告されている.
さらに,この現象が感情的要因に起因するか視覚的要因に起因するかについては不明である.
これらの問題を検討するために我々は,見本照合パラダイムを用いて,感情表情と中性表情の意識的知覚を検討する5つの心理実験を行った.
顔刺激が周辺視野に瞬間的に呈示され,参加者は同時に呈示された文字を中心視野で読んだ.
参加者は9つの見本から知覚された顔を選択した.
全実験を通して,感情表情は中性表情よりも正確に同定されることが示された.
さらに実験4では,怒り表情は,怒り表情と同程度の物理的変化を持ち中性感情を表現するアンチ怒り表情よりも正確に同定されることが示された.
感情表情と顔の向きの交互作用を検討した実験5では,参加者を向いた怒りの表情のほうが参加者から目をそらした怒り表情よりも,物理的には同じでもより正確に同定されることが示された.
こうした結果から,感情表情は,その感情的な意義によって意識的に知覚されやすいことが示唆される.
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