SATO Wataru Laboratory

自閉症スペクトラム障害における弱い動的表情に対する表象モーメントの低下


(Uono, Sato, & Toichi: Res Autism Spectr Disord)



自閉症スペクトラム障害(ASD)における対人相互作用の問題を理解するうえで,表情コミュニケーションの認知メカニズムを理解することは重要である.
近年の研究は,定型発達者において,動的表情の最終画像が誇張されて知覚されることを報告した(動的表情に対する表象モーメントと呼ばれる).
動的表情に対する表象モーメントは,他者の表情を検出し行動を予測する上で有用であろう.

我々は,ASD群において,3段階強度(弱・中・強)の表情で,動的表情に対する表象モーメントを調べた.
ASD群では動的表情に対する表象モーメントが低下していると予測した.
11名のASD群(3名はアスペルガー障害(Asperger)で8名は特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS))と知能・年齢・性別が対応する11名の定型発達統制(CON)群が,被験者として参加した.
被験者は,動的・静的表情を見て,最終画像を選択した.



両群とも全強度の表情に対して,動的表情の最終画像が静的表情よりも誇張されて知覚された.
しかしASD群ではCON群と比べて,弱強度の動的表情に対する誇張が低下していた.





日常のコミュニケーションでは弱い表情が多く表出されることから,弱い動的表情に対する表象モーメントの低下は,ASD群の表情コミュニケーションに障害をもたらすことが示唆される.


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